「まちはみんなのミュージアム」ステートメントー歩行ダンスに寄せて
歩く、家の周辺を1時間くらいかけ、ただただ毎日歩く。コロナ禍における緊急事態宣言下のもと、私が日々行なっていたことが歩くことだった。私に限らずパフォーミングアーツ、特に濃厚接触がその技法の中心にあるダンスに携わる者は緊急事態宣言の間、その活動が感染症対策のため大きく規制された。接触するだけでなく対面で集うこともままならない状態でダンスに一体何ができるのか?コロナウィルスはそんな途方もない問いを私に投げかけてきた。
最初は運動不足解消のため、そんな軽い気持ちで家の周りを散歩し始めたように思う。特に目的地も決めず、最後に戻ってくるのが家という以外はその日の気分で家の周辺を連日歩いた。春から初夏にかけて生い茂っていく木の葉の揺れや、草花の芽吹き、またそこに集ってくる虫たちの動きなど、日々刻々と変化する自然の様子や様々な動きがこの私の身体の中にどんどん飛び込んできてはこの身を揺り動かした。今日はどんなものがこの身に入ってきて震わせてくれるのだろう!いつしか私の歩行の目的はそれら外界との共振、交信に変わっていった。
それらとの関わりが私の生活に組み込まれていったことで、日々の暮らしにはこんなにも豊かなダンス的な瞬間があったのだと、それをことさら言いたいとは思わない。むしろそんなことに心動かされることなく日々過ごしていたそれまでの自分の生活、その生き方から生成されていた私のダンスがそれで果たして良かったのだろうかと考えさせられた。ならば歩くことから私のダンスを、そして世界との関わりを結んでいくこの身体を今一度見つめ直してみたい、歩行を続けながらそう思った。
ちょうどそんな時に、友人のダンサーであり散歩家である古川友紀さんから映像作品が送られてきた。その映像は夜を通して行われたあるオンライン企画に彼女が参加した際、約11時間歩いた行程を国土地理院の地図をクレヨンで辿るような映像をバックに彼女自身の語りと歩きながら録音された音などを重ね20分弱にまとめられたものだった。彼女の歩いたその記録を見て驚いたのだが、その工程は偶然にも私が10年ほど前に大阪で暮らしていた家の周辺を歩いていて、また一昨年亡くなった父が最後に過ごした病院の近くにも立ち寄っていた。実はその企画に私は東京の自宅からそして彼女は大阪の野外から共に参加していて画面上ではその時間を共有していたのだが、まさか同じ時間に彼女がそんなルートを歩いていたことにその映像を見るまで全く気づかなかった。そんな彼女の映像はある一日の歩いた記録ではあるのだが、私にとってはこの10年の時間を遡り、また亡くなった父の思い出に触れるような不思議なイメージを喚起させるものだった。
歩くこと、また他者の歩行に想いを巡らしてみること。今回の「まちはみんなのミュージアム」で取り組んでいることはまさに昨年のコロナ禍において私の歩行の体験、そこから生まれた様々な想いをメンバーに投げかけることからスタートした。足に何かしら問題を抱えていない人にとっては当たり前のように行ってきた歩行から改めて歩く身体、時間を見つめ、そこにある創造性、フィクションに目を向けてみたい。そこから一体何が見出せるのかは、それこそダンスをするかのように歩行を味わいながら次のステップを考えても良いんじゃないだろうかと、このウィルスとの関わりがまだまだ続く今、殊更そう思う。
まちはみんなのミュージアム'20 フェスティバルディレクター 砂連尾 理
1月23日(土)11:00〜、16:00〜 instalive配信
1月24日(日) 9:45〜 instalive配信
1月24日(日) 17:00映像公開、17:10頃instalive配信
企画者:佐久間尊之
出演者:佐久間尊之
有泉汐織、海川みずき、片山夏波、佐久間尊之、杉浦さとみ、たかすかまさゆき、田中有加莉、環笑子、利恵、都田かほ、はらだまほ、柳井遥、柳井美紀、鈴木てつや
91年、寺田みさことダンスユニットを結成。近年はソロ活動を中心に、ドイツの障がい者劇団ティクバとの「Thikwa+Junkan Project」、舞鶴の高齢者との「とつとつダンス」等。08年度文化庁在外研修員としてベルリンに滞在。著書に「老人ホームで生まれた<とつとつダンス>—ダンスのような、介護のようなー」(晶文社)。立教大学・映像身体学科 特任教授。
2021年1月10日(日) | 参加型プログラム「まちとわたしの小さな対話」参加マニュアル公開、投稿募集開始 |
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2021年1月19日(火) | 音声を聴きながらまちを歩いていただきます「空想さんぽ」公開 |
2021年1月19日(火) | 映像「小金井市歌」公開 |
2021年1月19日(火) | 映像「ことばを動きに変換する」公開 |
2021年1月19日(火) | 風景画 「まちとはらださんの小さな対話withたなか」公開 |
2021年1月19日(火) | 映像「触りたい」公開 |
2021年1月19日(火) | おと歩録、ことば歩録、からだ譜など「しん・街スケッチ」公開 |
2021年1月20日(水) | 映像「うちとそと」公開 |
2021年1月23日(土) | 映像「ことばのリレー:公園のまんなかにはおおきな木があって」公開 |
2021年1月23日(土)、1月24日(日) | 映像「手のヌードショー」公開(2日間限定公開) |
2021年1月23日(土)14:00〜/16:30〜、1月24日(日)15:00〜 | Instalive「まちに佇む in 小金井」配信 |
2021年1月23日(土)11:00〜、16:00〜 2021年1月24日(日) 9:45〜 |
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2021年1月24日(日)13:00頃〜17:00頃 随時配信 | Instalive「どこかから小金井までのクエストたちとの旅」 |
2021年1月24日(日) | 映像「パフォーマンス:巡」公開 |
2021年1月24日(日) | 映像「インチキ歩姿診断」公開 |
2021年1月24日(日) | 映像「朗読ライブ:この場所で、生きる」公開 |
2021年1月24日(日)17時 | 映像+instalive「エール」公開 |
2021年1月23日(土)、1月24日(日) | 映像「手のヌードショー」公開(2日間限定公開) |
今回のテーマは「やりたいことを発表する」
成果発表に向けてやりたいことを、一人一人発表した。
地図で踊る、テキスタイルを作る、表現のリレーをする、展示・・・これまでのWSを経て、今、ここでやりたいこと。ここから、各自、作品制作を始めていく。